つながる10年、これからもこのまちで。結いの会・高森東が育てる“お互いさま”の居場所

高森東公園の向かいにある、「ショッピングガーデン・キャラウェイ」
その一角に、やわらかな時間が流れていました。
テーブルを囲む参加者のみなさんの前には、黒や緑、紫などの色紙。
この日行われていたのは、認知症予防を目的とした「クリニカルアート体験」です。
講師を務めていたのは、臨床美術士の 辻紀子さん。
臨床美術士は、芸術を通じて脳を活性化し、心の表現を引き出していく専門的な資格で、取得するのも簡単ではないそうです。
この日の作品づくりは、目を閉じて描き始めるところからスタートしました。
正解を目指すのではなく、感じたままに手を動かしていく。
できあがった作品は、どれも少しずつ違っていて、その人らしさがにじむようなものばかりでした。
参加者のみなさんも、辻さんも、そしてこの活動を支える加賀屋さんも、とにかく笑顔がやさしい。
その場にいるだけで、「ああ、ここは安心していられる場所なんだな」と感じられる空気がありました。
この活動を行っているのが、結いの会・高森東です。

高森東で生まれた、地域の助け合い

結いの会・高森東は、高森5〜8丁目、北高森にお住まいの方々を中心に活動している地域活動団体です。
設立は2016年4月。
高齢化が進んでいく中で、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるように、地域のみんなで支え合う仕組みをつくろうという思いから始まりました。
合言葉のように掲げられているのは、「誰もが安心して年をとれる街を目指して」という言葉。
ただ、高齢者を一方的に「支える」という活動ではありません。
結いの会の根っこにあるのは、もっと自然な“お互いさま”の気持ちです。
加賀屋さんは、結いカフェの始まりについて、こんなふうに話してくれました。
「元気な高齢者が、高齢者を助けようというところから始まったんです」
できる人が、できることをする。
困ったときには、無理なく頼れる。
そんな関係を地域の中に少しずつ育ててきたのが、結いの会 高森東です。
加賀屋さんが地域活動に関わったきっかけ

今回お話を聞かせてくださった加賀屋さんは、結いの会・高森東の活動を長く支えてきた方です。
加賀屋さんが地域活動に関わるようになったきっかけは、引っ越してきた後のことでした。
その頃、小学校時代の恩師が地域活動をしていて、「手伝って」と声をかけてくれました。
さらに、地域でサロンを立ち上げるという話を聞き、「参加してみよう」と思ったことが、活動の始まりになったといいます。
でも、引越ししてきてまだ間もない時期。
子どもであれば学校などを通して自然と友達ができます。
大人である自分はどうだろう。地域の中に知り合いや友達ができるのだろうか。
そんな不安もあったそうです。
このお話を聞いていると、地域活動は特別な人だけが始めるものではないのだと感じます。
誰かに声をかけてもらった。
少し不安だったけれど、参加してみた。
そこから人とのつながりが生まれていった。
加賀屋さんの歩みそのものが、結いの会のあたたかさを表しているようでした。
4つの柱で支える、地域の暮らし

結いの会・高森東の活動には、大きく4つの柱があります。
ひとつ目は、結いカフェ。
地域の方が気軽に集まれる居場所です。
毎週金曜日を中心に、キャラウェイの1階で開催されていて、お茶を飲んだり、おしゃべりをしたり、自由に過ごすことができます。
この結いカフェの特徴は、「必ず何かをしなければいけない場所」ではないこと。
他のサロンでは、「今日はこれをします」というテーマがあることも多いですが、結いカフェはもっと自由です。
ただ来て、少し話して、そこにいるだけでもいい。
高齢者がひとりになると、何気ない会話をする機会が少なくなることがあります。
「今日は天気がいいですね」「最近どうですか」
そんな、なんでもない会話ができる場所があることは、実はとても大切なことなのかもしれません。
取材の日も、キャラウェイを通りかかった男性が「何をしているんですか?」と足を止めて、活動の様子を見学されていました。
こうして、ふらっとのぞける空気があることも、結いカフェらしさだと感じました。

ふたつ目は、健康体操。
高齢者だけでなく、子育て中のお母さんなど、幅広い世代が一緒に参加しているそうです。
体を動かすことは、健康づくりにつながります。
でも、それだけではありません。
顔を合わせる、声をかけ合う、同じ時間を過ごす。
そうした積み重ねが、地域のつながりにもなっていきます。
三つ目は、めいめいカフェ。
認知症について理解を深めたり、当事者や家族の方が思いを共有したりする場として続けられています。
認知症という言葉には、少し構えてしまう方もいるかもしれません。
けれど、こうした場があることで、ひとりで抱え込まずに、地域の中で話せるきっかけが生まれます。
そして四つ目が、助け合い・見守りです。
ごみ出しや庭の草取り、ちょっとした困りごとへの手助け、電話などによる見守り・安否確認。
日々の暮らしの中で、「少し助けてほしい」と感じる場面に寄り添う活動です。
“有償”にすることで、頼みやすくする
結いの会の助け合い活動で印象的だったのが、有償で行っているという考え方です。
地域の助け合いというと、無償ボランティアをイメージする方も多いかもしれません。
でも加賀屋さんは、有償にすることには大切な意味があると話します。
それは、依頼する人の気持ちの負担を軽くするため。
無償で助けてもらうと、頼んだ側が「何かお返ししなければ」と気を遣ってしまうことがあります。
でも、あらかじめ決まった形でお願いできれば、頼む側も少し気持ちが楽になります。
これは、お金を取るためというより、「困ったときに頼りやすくするための仕組み」なのだと感じました。
やさしさを気持ちだけで終わらせず、続けられる形にしている。
そこに、結いの会らしい丁寧さがあります。
続けるために、バトンタッチしやすく

結いの会・高森東には、活動参加メンバーが約80名、会員は約260名いるそうです。
地域の多くの方に支えられながら活動が続いています。
また、4つの活動ごとにリーダー中心のサブリーダー会があり、それぞれの活動を支える体制も作られています。
加賀屋さんは、今年度から副代表ではなく事務局へと役割を移しました。
そこには、世代交代をしっかり考えたいという思いがあります。
「バトンタッチしやすくしたい」
「誰でもやれるようにしていきたい」
「活動を見える化していきたい」
「属人化しないようにしたい」
そんな言葉からは、地域活動を長く続けてきた人だからこそ見えている課題と、次につなげる責任感が伝わってきます。
地域活動は、思いだけでは続きません。
準備する人がいて、声をかける人がいて、場所を整える人がいて、季節ごとの企画を考える人がいる。
加賀屋さんは「淡々と続けるのが良い」と話します。
でも、その“淡々”の裏側には、見えない準備や工夫がたくさんあります。
雰囲気をつくっているのは、参加する人たち

結いカフェには、男性の参加者も多いそうです。
参加者の約4割が男性というのも、地域のサロンとしては印象的です。
初めて来る方は、誰かに誘われて来ることが多いとのこと。包括支援センターなどから案内されて参加する方もいるそうです。
だからこそ、加賀屋さんは「1回目の対応が大切」と話します。
初めて来たときに、安心できるか。また来たいと思えるか。
その最初の空気づくりが、次につながっていきます。
ただ、加賀屋さんはこうも話していました。
「結いカフェの雰囲気は、参加者が作っているんです」
運営する人だけが場をつくるのではありません。
そこに来る人が、笑って、話して、隣の人を気にかける。
その積み重ねが、結いカフェの雰囲気になっているのだと思います。
取材時に参加されていた皆さんも、とても楽しそうでした。
作品を手にした集合写真の表情からも、この場がただの講座ではなく、安心して過ごせる時間になっていることが伝わってきます。

これからも、この街で

ニュースレターには、こんな言葉がありました。
「つながる10年・これからもこの街で」
結いの会・高森東は、2016年の発足から、地域の中で少しずつ活動を積み重ねてきました。
活動場所を探す中で、三菱地所に連絡をしたこともあったそうです。
仙台市の助成金を活用しながら、最初は有料でスペースを借りていた時期もありました。
今では、活動を続ける中でフリースペースとして場所を提供してもらえるようになり、地域の中に自然と根づいてきました。
もちろん、加賀屋さんは「もっとやれることはある」とも感じているそうです。
そして、時代や相手に合わせて変化していくことも大切だと話します。
変わらず続けること。
でも、必要なところは変えていくこと。
その両方を大切にしながら、結いの会・高森東はこれからも地域の中で活動を続けていきます。
高森東で暮らす人たちが、住み慣れたまちで安心して年を重ねていけるように。
困ったときに「ちょっと助けて」と言えるように。
そして、なんでもない会話を楽しめる場所が、これからも地域の中にあり続けるように。
結いの会・高森東の活動は、そんなあたたかな願いから育っている地域の居場所です。
気になる方は、まずは結いカフェをのぞいてみてはいかがでしょうか。
そこにはきっと、優しい笑顔と、ほっとできる時間が待っていますよ。
ではでは。

この記事書いた人
よっしー
人・もの・コトとの出会いが好き。
その場所に流れている空気や、何気ない会話の中にある誰かの「想い」を、そっと見つけて伝えていけたらと思っています。

