夜22時の「困った」に応えてきた、泉パークタウンの電気屋さん・デンキカン泉

デンキカン泉

この街で、気になる人に会いに行く

こんにちは。

この街のさまざまの場所を巡りながら、街の「人・もの・コト」をつなぎたいと思っている「よっしー」です。

今回お話を聞きに行ったのは、泉パークタウンにあるデンキカン泉

代表取締役社長の藤井さんが、たくさんお話を聞かせてくださいました。

取材前は「まちの電気屋さん」という、少し懐かしいイメージを持っていました。

けれど、藤井さんと話してみて、その印象はすぐに変わりました。

ここは電気を売る場所ではなく、暮らしのそばに立ち続けてきた人の場所でした。

仕事で来た街が、帰る場所になった

デンキカン泉の外観

藤井さんが泉パークタウンに来たのは、今から32年前。

32年前、三菱電機が「デンキカン泉」をオープンさせました。

デンキカン泉は、地域の方の暮らしをサポートするのはもちろんですが、全国でも注目されていた泉パークタウンで、製品の反応を見たり、アンケートを取ったりするための店舗だったそうです。

藤井さんはその担当として、転勤でこの街にやってきました。

最初から「ここに住もう」と決めていたわけではありません。

あくまで仕事で来た街。

けれど当時を振り返る藤井さんの言葉が印象的でした。

「バブルが崩壊して、世の中が一気に冷え込んだ時期だったんです。でも、この街だけは、なぜか伸びていたんですよね」

街全体がきちんと整えられ、住む人のことを考えてつくられている。

その空気は、外から来た人ほど、はっきりと感じたそうです。

それでも、この街を離れなかった

デンキカン泉藤井社長

調査を兼ねた店舗という性質上、いつかは終わりが来ます。

三菱電機が撤退を決めたとき、藤井さんの前にはいくつかの選択肢がありました。

会社に戻るか、別の土地へ行くか。

それとも――。

「10年くらい、この街で仕事をしていたんです。その間に、たくさんのお客さんとつながりができていて。正直、それを置いていくという選択が、どうしてもできなかったんですよね」

淡々とした語り口でしたが、その言葉の重みは十分に伝わってきました。

藤井さんは会社を辞め、泉パークタウンに残り、電気屋として独立します。

それが、今のデンキカン泉のはじまりでした。

夜22時の「困った」に、応えてきた

デンキカン泉看板

取材の中で、特に心に残った話があります。

夜22時。

街の方から「困った」という電話がかかってくることが、何度かあったそうです。

しかも、そのタイミングが、お酒を飲んでいる最中だったことも少なくありません。

「すべてがその場で直せるわけじゃないんですよ。でも、とりあえず行くんです。タクシーで」

修理ができるかどうかよりも、顔を見せること、声を聞くこと。

それだけで、お客さんは安心してくれる。

安心して眠りにつくことができる。

今の時代から見ると、効率の良いやり方ではないかもしれません。

けれど、その積み重ねが、藤井さんと街の人たちとの距離を、少しずつ縮めてきたのだと思います。

売らない、押しつけない

藤井さんは、はっきりと言います。

「訪問販売は、好きじゃないんです」

モノを売るために家を回ること。メーカーから「これを売れ」と言われること。

そうしたやり方に、ずっと違和感があったそうです。

だから、無理に売らない。

必要なときに、必要な提案をする。

「お客さんを想って対応すると、不思議と、お客さんもこちらを想ってくれるんですよね」

困ったときに思い出してもらえる存在であること。

その距離感こそが、デンキカン泉が続いてきた理由なのだと感じました。

表に出ない仕事が、街を支える

藤井さんは、みやぎ仙台商工会の理事としても、長く活動してきました。

自治会町内会と連携しながら、街を支える役割を担ってきた一人です。

売上に直接つながる仕事ではありません。それでも続けてきたのは、この街が好きで、ここで暮らす人たちの顔が浮かぶから。

“電気屋としてできること”と同時に、“街の一員としてできること”。

その両方を、無理のない形で積み重ねてきた人なのだと思います。

人が多様だから、距離感が大切

藤井さんから見た泉パークタウンは、とても多様な人が暮らす街なんだそうです。

医師、大学の教授、銀行や電力関係の仕事をしている人。

首都圏からの転勤で来て、そのまま住み続ける人も多い。

「個性の強い人も多いですよ。正直、簡単じゃないこともあります」

そう話しながらも、どこか楽しそうな表情が印象的でした。

いろんな価値観があるからこそ、話を聞く姿勢が大切になる。

押しつけず、決めつけない。

藤井さんの仕事の姿勢は、この街の多様さの中で磨かれてきたのかもしれません。

人が先にいる会社

デンキカン泉のスタッフさん

取材の最後に、スタッフの皆さんと一緒に写真を撮らせてもらいました。

その場の空気は、とても自然でした。

無理に笑顔をつくる感じはなく、気がつけば、みんなが笑っている。

藤井さんは社員さんたちとの関係について、こう話してくれました。

「よく飲みに行きますよ。社員からも“お酒好きな社長”って言われてます」

お酒が好きで、健康を気にして今は少し控えめに。

ビールからウィスキーに。

そんな話も含めて、人となりがにじみ出ていました。

立場に関係なく話し合える風土。

集合写真の雰囲気からも、それは十分に伝わってきました。

この街は、まだ続いていく

他の団地では、空き家が増えたり、高齢化が進んだりする話も聞きます。

けれど藤井さんは、泉パークタウンについてこう語ります。

建て替えが進み、新しい住民が入ってくる。

世代がゆるやかに入れ替わり、街が循環している。

「それが、まだうまく回っているんだと思うんです」

だからこそ、自分たちができる範囲で、街を支えたい。

大きなことはできなくても、“困ったときに思い出してもらえる存在”であり続けたい。

西の窓から、蔵王連峰

楽しく話す藤井社長

「この街でいちばん好きな場所はどこですか?」

そう聞くと、藤井さんは少し考えてから、こう答えてくれました。

「自宅の西側の窓から見える、蔵王連峰ですね」

毎日の暮らしの中で、ふと目に入る景色。

特別な場所ではなく、日常の一部としてそこにある風景。

この街で過ごしてきた時間の長さと、ここが“生活の場所”になっていることを象徴する言葉でした。

「困ったら、思い出す場所」

商品の値段は取材時のものです

デンキカン泉は、最新の家電をずらりと並べるお店ではありません。

けれど、「ちょっと困った」「誰に聞いたらいいかわからない」そんなときに、ふと思い出してもらえる場所です。

売らない。押しつけない。それでも、必ず向き合う。

こういう人が街にいてくれることは、思っている以上に、心強いことなのだと思います。

「電気屋さん」って聞くと、家電の話を想像しがちですが、実は“安心”を扱っている人たちなのかもしれません。

そんなことを、藤井さんの話を聞きながら感じました。

今日もどこかで、「ちょっと困った」に応えている人がいる。

そう思えるだけで、ここでの暮らしに少し安心が加わる。

そんな気がします。

ではでは。

デンキカン泉

  • 住所:仙台市泉区高森1丁目1-190(高森ショッピングプラザ内)
  • 電話番号:022-378-8811
  • 営業時間:10:00〜18:30
  • 定休日:なし
  • 公式サイト:https://www.denkikan-izumi.com/

※営業時間・定休日などは変更になる場合があります。最新情報は公式サイト等でご確認ください。

よっしー

この記事書いた人

よっしー

人・もの・コトとの出会いが好き。
その場所に流れている空気や、何気ない会話の中にある誰かの「想い」を、そっと見つけて伝えていけたらと思っています。

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